調理の基礎知識
訪日外国人の増加に伴い、食事のニーズも多様化しています。
例えば、肉や魚、卵や乳製品などの動物由来の食材を食べないヴィーガンや、
豚やアルコールを口にしないイスラム教徒(ムスリム)など、さまざまな食の習慣や禁忌がある人が増えてきています。
本ページでは、植物由来の食材で満足感がある料理をつくるための手法を紹介します。
野菜の味や香りを濃縮してボリュームを出すなど、食感を工夫することで、
口に入れた時のインパクトを強め、植物由来の食材だけでも十分に満足感のある料理をつくることができます。
料理をする時は五感をイメージすることが大切です。味覚はもちろん、嗅覚、触覚、聴覚、視覚のすべてが味に影響を与えます。 これから紹介する手法と、その手法を使った対応レシピを参考にしながら、 より多くのお客様に安心して楽しんでいただける料理にチャレンジしてみてください。
本サイトにおけるヴィーガンとハラールの考え方
ヴィーガンとベジタリアンについて
ベジタリアンとは、広く肉・魚介類を食べない人のことをいい、人によって卵や乳製品を食べない人もいます。 動物由来のもの全般を食べないヴィーガン、乳製品は食べるラクト・ベジタリアン、 卵は食べるオボベジタリアン、乳製品と卵は食べるラクト・オボ・ベジタリアン、 香りの強い野菜(玉ねぎ、ねぎ、にら、にんにく、らっきょう、あさつき等)を避けるオリエンタルベジタリアンなどの種類があります。
本サイトで掲載しているレシピは、動物由来の食材・調味料を使用しないレシピをヴィーガンとして掲載しています。
※砂糖は製造工程において骨炭が使われていないもの(精製過程におけるろ過や脱色に動物の骨が使われていないもの)を使用
宗教上の戒律と禁忌について
歴史の変遷とともに食事は栄養補給から文化行為へと変化し、それぞれの宗教が広まる過程で様々な理由から食の戒律や禁忌が設けられてきました。 主に豚とお酒を口にしないイスラム教、豚やうろこのない水産物などを食べないユダヤ教、牛などを食べないヒンドゥー教等、さまざまな理由により食に禁忌を定めている宗教があります。
本サイトで掲載しているレシピは、豚肉と豚由来の食材・調味料、及びアルコールを使用していないレシピをハラール対応メニューとして掲載しています。
ヴィーガン・ハラール・グルテンフリー対応における
メニューづくり・対応の心得
ヴィーガン
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●肉の代用について
大豆ミート、豆腐、厚揚げ、お麩、テンペなどを肉の代わりに用いることで、食べごたえのあるメニューづくりが可能です。現在、様々な種類の大豆ミートが、比較的容易に入手できるようになっています。
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●乳の代用について
豆乳、アーモンドミルク、ライスミルク、ココナッツミルク、オーツミルクなどを代替乳として使用することが可能です。またヴィーガンチーズ、ヴィーガンバターなどの加工食品の販売も増えてきています。
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●だしについて
日本料理で良く使われる「だし」は、魚介類を含む動物由来のものを使用しないよう注意しましょう。
(例)かつおや煮干し等、魚を使っただしは使用不可。昆布、椎茸等のきのこ類、野菜を使っただしは使用可能 -
●ハチミツについて
ハチミツは使用できません。メープルシロップ、アガベシロップ、水あめ等での代用が可能です。
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●油脂について
調理に使用する油脂のうち、「バター」「ラード」「ヘット(牛脂)」「魚油」等は動物由来の食材にあたりますので、使用できません。
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●揚げ物について
動物由来の食材を揚げた油の再使用は避けましょう。
ハラール
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●豚・豚由来の食材について
豚は肉そのものだけでなく、皮・脂・骨などや、豚から派生してつくられる原材料の全てが豚と同様にNG とされています。
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●牛肉・鶏肉などについて
牛や鶏はイスラムの教えに沿った方法でと畜されている必要があります。見た目による判別は困難なため、ハラール認証された食材を使いましょう。
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●アルコールについて
料理用の料理酒・みりん・ワインは調理法によってアルコール成分が揮発することがありますが、ハラールとしてはその使用自体を不可と判断するムスリムも少なくありません。手指消毒、テーブル、キッチンなどで使用する消毒用アルコールの使用は問題ありません。
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●醸造調味料(醤油、味噌)について
アルコールが添加されていない醤油・味噌か、ハラール認証を取得している醤油・味噌を使うと良いでしょう。
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●揚げ油について
豚由来の食材を揚げた油の再利用は避けましょう。
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●調理器具・食器について
調理器具や食器は、通常の洗浄をすれば共用でも問題ないと感じるムスリムもいますが、人によっては NG とされている方もいます。 判断基準には個人差があるため、全てのお客様に対応される場合は、専用の調理器具や食器を用意すると良いでしょう。
グルテンフリー
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●グルテンフリーとは
グルテンフリーとは、麦類(小麦、大麦、ライ麦等)に含まれるたんぱく質のグルテンを摂取しない食事やグルテンを含まない食品のことを指し、セリアック病のような自己免疫疾患を持つ方や食生活の改善を目的とする方など、幅広い方々がグルテンフリーの食事を実践しています。
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●グルテンを含む代表的な食品
うどん、パスタ、パン、カレー・シチューのルウなどの他、醤油、味噌などグルテンが含まれている可能性がある食品は様々あります。その代用品として、米粉や大豆粉を使用した食品も少しずつ増えてきています。
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●コンタミネーションについて
重度な自己免疫疾患を持つ方にとって、コンタミネーションは深刻な問題です。グルテンフリーメニューを提供される場合は、お店の状況を分かりやすく伝え、お客様自身に判断いただくようにすると良いでしょう。
(例)「店内で提供している料理の全てがグルテンフリーではございません」
「キッチン内でグルテンを含む食材を使用している場合がございます」など
※本心得は基本的な事項であり、すべての対応方法を網羅するものではありません。
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●本サイトのレシピは、お店のメニューとしてご自由にお使いいただけます。
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●本サイトのレシピで紹介されている材料(砂糖類、ソースなど)は、市販されている全ての商品が、ヴィーガン・ハラール対応になっていることを保証するものではございません。ご自身の店舗や施設でメニューをつくられる際は、使用する食材・調味料の原材料・成分を仕入先やメーカーに確認し、動物由来など、使用できないものが含まれていないかをチェックするようにしましょう。
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●ヴィーガンやハラールの解釈は地域差や個人差があるため、食材だけでなく、ご自身の店舗の対応状況(調理環境など)も含めて、お客様に説明できるようにしましょう。
ヴィーガン・ハラール・グルテンフリー対応における調理の基礎知識
①焦がす
焦がすという手法は、嗅覚を刺激します。どのように焦がすか、例えば近火の強火と遠火の強火では、素材の水分量が大きく変化します。その結果、スモーキーな香りがプラスされたフレッシュな味わいや、香りに奥行きのある凝縮された味わいなど、効果的に変化させることができます。
「焼きトウモロコシとアオサ海苔のゼッポリーニ」は、この手法を使用した料理です。
また、焦がすという手法は、燻製のように素材の風味を高めることができます。焦がした素材の皮も食材ごとに味が異なりますので、例えば焦がした皮を乾燥させて調味料として使うと、余すことなく素材の個性を活かすことができます。
茄子やトマトなどの果菜類は表面の皮が焦げても内側の果肉が焦げにくいため、この手法に適しています。ほかにもキャベツやネギなどの葉菜類や、ダイコンやニンジン、カブやゴボウ、ビーツや玉ねぎなどの根菜類にも有効な手法です。

②油分を補う
植物由来の油脂を意識的に補うと、味わいのボディーを深めることができます。
油分を補う技法には、料理の仕上げにオイルをかける、食材を揚げる、油分の多い食材を使う、などの方法があります。料理の仕上げにオイルをかける際、香りが不要の場合はグレープシードオイルを、香りにアクセントがほしいときにはココナッツオイルを使うなど、香りの強弱で選びます。また油は香りを吸収しやすい性質を持つため、油に香りを添加することで奥行きを演出することもできます。ニンニクオイルやハーブオイル、燻製オイルはこの特性を活かしています。食材を揚げると、水分が脱水して味が濃縮するのに加え、食材が揚油を吸収して風味が高まり、味わいのインパクトが強くなります。
「ココナッツミルクでコクたっぷり欧風カレー」は、この手法を使った料理です。
油分の多い食材を使う場合は、ナッツ類を使用します。形のままで使えば食感のアクセントになりますし、ブレンダーにかければねっとりとした口当たりのペーストになります。濃厚なコクが欲しい場合には生の白ゴマをペーストにしたタヒニや、牛乳のようなコクが欲しい場合にはココナッツのミルクやクリーム、シュレッドが便利です。

③火入れを工夫する
火入れを工夫して、香りや水分量、テクスチャーなどに変化を与えます。
肉や魚と同じように、野菜の調理においても火入れは大切です。素材の持つ水分量や糖分などの性質を捉えつつ、焼く、煮る、揚げる、茹でる、焦がすなど、料理に応じた火入れの工夫が味わいの濃縮や香りの添加などの効果をもたらします。
「白玉蒸し饅頭 紅花ソース仕立て」は、この手法を使った料理です。
火入れにおいて重要になるのは、水分量です。火入れは、細胞の変化(成分変化を含む)とともに水分量の変化を起こします。食材に含まれる水分は、生の状態では水風船に包まれたような状態ですが、加熱すると風船が壊れて水分が流れ出てきます。例えば、焼き茄子が加熱に伴いトロトロになるのが代表的です。水分が多い食材ほど、火入れにより食感や質感に変化を与えられます。

④ハーブやスパイスを使う
ハーブやスパイスを使うことで、豊かで複雑な香りや、強く濃厚な印象を残すことができます。
肉や魚の料理にハーブやスパイスを使うのは肉などの臭みを和らげるのが目的ですが、野菜に使う場合は香りを重ねることで、より香り豊かに仕上げることができます。
「大豆ミートとなすのラザニア」は、この手法を使った料理です。
ハーブを使う場合は、フレッシュハーブと乾燥ハーブの香りの特徴をつかみ、使い分けをすることが大切です。また乾燥ハーブを使う際には、使用直前に乾煎りなどをして、温めてから使用することでより香りが高まります。
スパイスを使う場合は、それぞれのスパイスの香りの特徴をしっかりと理解して使用することが大切です。またスパイス自体もそのままの状態で使うのか、あるいは割ったり砕いたりして使うのかでも印象は大きく変わりますので、用途に合わせて使い分けます。

⑤食感を活かす
味や食感のアクセントになりやすい食材を効果的に使うことで、野菜や豆が主体の料理にもインパクトや満足感をもたらすことができます。また野菜などの素材自体への火入れによる食感の変化も表現すると、料理としての満足感や楽しみを高めることができます。
「坊ちゃんかぼちゃ 西京味噌焼き」は、この手法を使った料理です。
アクセントとして使える食材には、ひよこ豆やチアシード、車麩や大豆ミート、グラノーラやポップコーンなどがあります。

⑥味を含ませる
味を含ませることで、味わいに厚みや奥深さを表現できます。
味を含ませる手法には、素材を加熱後にだしに浸す、浸透圧を利用してマリネする、真空で加熱しながら味を含ませる、などがあります。また野菜のブイヨンや昆布だし、トマトのエキスなど、様々な表情があるエッセンスを用いることで、ひとつの野菜からも厚みや奥深さを表現することができます。
「ルバーブのデザート ナツメ餡の白玉団子とともに」は、この手法を使った料理です。
茄子や大根のように、生の状態では肉質はしっかりしているのに加熱すると水分が流出し、その隙間に味を染み込ませられる野菜に適した手法です。漬物の素材となるような野菜も同様です。例えば、千枚漬けに代表される蕪は水分の塊ですが、漬物にする段階で漬け地との浸透圧の関係で水分の交換が行われ、あの甘味ある味わいの漬物となります。水分が多い野菜ほど、その野菜自体の水分と含ませたい液体の交換がスムーズに行われます。
